研究ブログ
共同研究
2021年07月04日
共同研究者:横浜女学院中学校高等学校の英語科教諭白井龍馬教諭)
CLILについての論文執筆(以下、論文レジュメ)
CLILの可能性について:深い学びに繋がる英語教育
CLIL(Content and Language Integrated Learning)は、教育者や研究者の間で注目されている新しい教授法である。外国語教育では、言語を教える際には、コンテント(内容)を通して外国語を教えてきた。多くの場合、その内容は、文化、ニュース、社会問題といったものであった。新しいアプローチであるCLILが、従来のコンテントを使う授業と異なるのは、外国語を教えるために使用されるコンテントがアカデミックな教科であるということである。したがって、この新しいアプローチは、アカデミックな教科を学び、それについて議論をし、伝えるために必要な外国語を教えることに焦点を当てている。
本稿では、CLILの教育学的背景を紹介し、日本の学校におけるCLILを使う授業例を紹介する。そして、日本の教室における教育と学習の状況の中でのCLILの実践の可能性と課題について議論する。
ビジュアル・ナラティブ研究会(鈴木栄・松崎真日・水戸貴久)の活動
英語・韓国語・日本語を教える3人が外国語を学ぶことについて共同研究をしています。学習者が何を考え、どのような学習動機をもち外国語を学んでいるのか、学習者のビリーフやモチベーションに焦点をあてて、研究方法としてビジュアルから学習者の考えを紐解いていく方法について研究を続けています。
言語文化研究18巻フォーラムでは、以下の概要で論文をまとめました。
<概要>
本稿では,英語・日本語・韓国語を外国語として学習する学習者が言語学習をどのように意味づけているのかを,ビジュアル・データと言葉による記述データにより取り出し,ビジュアル・データと記述データに表現されるものは異なるのか調査した。調査の結果,ビジュアル・データでは,抽象度が高いイメージが描かれる,自分を中心にしたナラティブが描かれる,表情や色調により感情が表現される,一つの現象が表現されるという特徴があるのに対し,文章によるデータでは,具体性がある,社会言説の影響がナラティブに表れる,感情は論理的に説明される,複数の現象が表現されるという特徴が見られた。これらの結果を元に,ビジュアル・データにはどのような可能性があるのか考察し,学習者研究における新たな方法の提案を行った。
2021年度は、フォーラム論文での結果をさらに検証する研究をおこないます。
2021.3.19におこなった話合いの内容は以下になりました。
<話合い>
- 論理性が出るのは文章(文字)である。
- 感情がより出るのは(絵)である。形容詞を表現する媒体となる。
- 文章では出ないものが絵で表現できる。絵は何かを表現する際の媒体である。
- Zine(コラージュと文字)は、それを媒体として学習者が学習言語で表現する補助となる。
Zineがなく、ただ発表をする場合では発表される言葉が均一化し、個性・自己表現ができないのではないか。(例:自己紹介では、英語であれば、My name is …….. I am from….
I like……… など型にはまった表現になる)
<今回の研究の流れ>前回のフォーラムでの研究を経て
- 前回の研究結果からさらに追求したい点
- 文章では社会言説が出た言語があった(英語)。社会言説の影響を受けやすい外国語はあるのか。例として英語は受けやすい言語であるが、社会言説の影響を受けることは学習者にとってよいことなのか。
- 前回の研究の結論として「ビジュアルと文章により学習者のもつビリーフなど学習者の内面をさらに良く理解することができる」とした。今回は、ビジュアルなものを使うことで学習者の学習言語にどのような影響(プラスの効果)がでるのかを見て見よう。
- 前回は、学習者に絵を描いてもらったが、絵そのものは評価しないものの、絵が描けない学習者には、コラージュや写真などの媒体を使い自分を表現する方法も加えてみる。
(SNS・インスタなど画像データを頻繁に使う世代にはこうしたデータ収集法も効果的であると思われる。)
(例:zineを使うイギリスの大学では、英語のスピーチをするための足掛けとしてコラージュがあると有効で英語発話量が増えたと報告している)ビジュアルを使う学習効果について検証してみよう。
- 学習言語による表現を見てみよう。(前回は日本語以外の学習者は説明を母語で記述)
- 本年度はいろいろな制約もあることから、絵・文章のテーマは各言語担当で決める。
(なぜそのテーマにしたかという確認は各自おこなう) - 前回使用した「研究協力同意書」を使う。
- 研究課題:①ビジュアル・データと文章によるデータの違いは何か。
②前回の調査結果と比較して新しい発見はあるか。
③ビジュアルを使用することで学習者の外国語のアウトカムはどのように変化するか(文章だけの時よりも豊かな表現で伝えることができるか)。 - データ収集方法
*量を多く獲ることを目的としない。
クラスを半分に分ける(G1/G2)。
研究同意書に記入してもらう。
G1 質問の答えを絵(コラージュ・写真)で表現する。
G2 質問の答えを文章(学習言語)で表現する。
↓
数週間後
G1 同じ質問の答えを文章(学習言語)で表現する。
G2 同じ質問の答えを絵(コラージュ・写真)で表現する。
オンライン学会報告
2021年03月08日
言語文化教育研究学会第7回年次大会「アートする」教育2021.3.8
<大会シンポジウム>アートが拓くことばの教育の未来
軽井沢風越学園の校長である岩瀬直樹先生の発表が印象に残っています。岩瀬先生は、東京学芸大学大学院卒業後、公立の小学校教諭を勤め、学習者中心の授業・学級・学校づくりに取り組んでこられました。その後、軽井沢風越学園設立に関わり、現在は校長、理事をされています。著書には、『せんせいの作り方これでいいのかなと考え始めたわたしへ』(共著、旬報社、2014年)、『最高のチームになる!クラスづくりの極意』(農文協、2011年)などがあります。
今回のシンポジウムでは、軽井沢風越学園での取り組を中心にお話をしてくださいました。「教室をあそぶ」と題して、児童と一緒に学校をあそぶことが大切であるという視点から実践した「教室リフォーム・プロジェクト」についての話がありました。一般に、教室のイメージは前に誰かが座っており、その人の後ろ姿を見ながら授業に参加する場合が多いのですが、学習者の目線で、学習したいという気持ちが起こる教室空間はどのようなものか、と考えた結果、このようなプロジェクトに繋がりました。児童たちは、教室をリビングルームにしたり、図書館の空間を作ったりしたそうです。その課程で、児童たちが従来の教室を壊し始め学校は、創造していく実験場であるという実感を得たそうです。プロジェクトをおこなっている中で、児童たちは、いろいろなことを考えました。例えば、「ロビーが作れるのか」「校庭に泊まれるのか」「テントをつくれるのか」など何かをしたいという情熱が出てきたそうです。自分が学ぶ学校環境を学習者と教える側が共同作業で変えていくという試みは興味深いものでした。学習環境は、学習者に様々な影響を与えることに気づくこと、そして学習者が学習環境づくりに参加できるようにすること、は教える側の責任でもあると発表を聴きながら思いました。
軽井沢風越学園のサイト
軽井沢風越学園 (kazakoshi.ed.jp)
軽井沢風越学園の風景写真
オンライン学会報告(発表)
2021年03月07日
Zineは、Magazineに由来し命名された個人制作の冊子です。1930年代にアメリカで生まれたサブカルチャー的なSF同人誌がZineのルーツです。1950年代にはカウンターカルチャーと結びつき、若者の自己表現ツールとしてのムーブメントが起こりました。1980年代にはパンクカルチャー、スケートボードカルチャーなど様々なユースカルチャーと結びつき広がりを見せるようになりました。
Zineを教育に取り入れる試みは、例えば、中学校の総合学習「テーマ研究」(中村、2018)で生徒がテーマを決めてから表現方法(写真や絵画などのポートフォリオ、雑誌のようなもの、日記のようなもの、など)を選び制作をおこなっています。発表会では、それぞれのZineを発表し、参加生徒は「鑑賞」し自己評価をおこないます。ビジュアル表現を使うため、日本では美術の授業で使われることが多いようですが、海外では、Zineを外国語学習の中で、自己表現の方法として使っています。
その例として、イギリスの大学University of the Arts London(UAL)(ロンドン芸術大学)の英語プログラムでおこなわれているEnglish Plus Mediaの授業での取り組を紹介し、Zineを外国語教育の中でどのように利用できるか、その可能性について論じました。
Zineを使うことで、英語で何を伝えたいのか自分の考えをまとめることができたこと、発表をする際の不安が無くなったことなどが報告されました。
以下のZineは、ロンドン芸術大学の留学生が「今の気持ち」について描いたものです。
それぞれの絵を見せながらプレゼンテーションをおこない、絵は評価せず、スピーチをIELTSの規準で評価するそうです。

*このzineでは、テクノロジーに支配されている現代人の恐怖を表現しています。

*このzineでは、トランプ政権下のアメリカとイタリアの関係が悪化しており、船に象徴される交流が沈没しつつある状況を表現しています。

*このzineには、Londonに来た学生の期待と不安が表現されています。
研究旅行
2020年10月
I was invited to 2020 Virtual English Concert organized by my friend Joo-Kyung of Honam Univerisy in Korea to give a congratulatory speech. It was a great event.
大学に来られない学生のための英語の大会でした。